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パイプオルガンと音楽
 
◆特集◆
公共ホール等の
パイプオルガン
導入について


芸大奏楽堂オルガンの導入に関し、衆議院決算行政監視委員会で追求

芸劇オルガン
導入と運営に
おける問題点


選定委員選定







2003 :
06. 09 掲載開始
06. 19 改訂増補
06. 24 改訂増補
07. 03 改訂増補
07. 07 改訂増補
07. 09 改訂増補
07.11 改訂増補




◆◆◆ 特集 ◆◆◆ 公共ホール等のパイプオルガン導入について


東京芸術劇場 “欠陥オルガン”
東京芸術劇場、パイプオルガンを所有する他のホールの例を調査中 (6/30付で調査票を送付)。 (7/ 11)
読売新聞 『東京芸術劇場パイプオルガン トラブル続出「設計に問題」 』 と報道 (6/13夕刊 松本良一記者) -- この記事の中で、本サイト主宰者の大林も、日本人オルガン製作者として意見を求められています。 (6/15)
産経新聞 『東京芸術劇場“欠陥オルガン” 狂騒曲もう御免』 と報道 (5/29朝刊) (5/31)
芸大奏楽堂 ガルニエ・オルガンの不明朗な導入、ついに 衆議院 決算行政監視委員会 で追求 (4/29)
 鋭意執筆中 オルガン設計製作者の立場で探る東京芸術劇場オルガンの問題点 (7/ 11)
年間1200万円の放漫出費、都芸劇オルガンの維持費
「回転式」芸劇オルガン、コンセプトと設計の誤り
有効に活用されない(できない)なら即刻廃棄
ほんとうにオルガン選定委員会は必要だったのか?
そして遂に始まる オルガン界の構造改革 etc, etc.



このページ http://pipeorgan.jp/topics/ では、 東京芸術劇場のオルガンのコンセプト上の疑問点、オルガン選定委員の「選定」の問題、メンテナンスを巡る 数々の問題点について、専門的見地からメスを入れ問題点を指摘する予定です。相当な分量になるので、少しずつ掲載していきます。新たに追加する部分は、あまり推敲しないで掲載してしまうことが多いと思いますが、ご容赦下さい。

東京都はあいかわらず、このオルガンのために無駄な金を費やし続けており、この状態には一刻も早く終止符を打つ必要があります。ひんぱんに更新する予定ですので、この問題に関心のある方は時々見に来て下さい。 (準備中の論点については、タイトルのみ示します。)

敬称は省略することがありますが、ご了承下さい。これらの文章を公開する理由は、日本の公共施設、特にコンサートホール等へのオルガン導入におけるプロセスや結果をオルガン設計製作者(&アドヴァイザー)の立場で論評することにより、最終的にはこれらのオルガン発注に際しての構造的な問題点を指摘することにあります。公金を用いて行われる事業には透明性が必要であるとの観点から、結果として個人の名前を挙げて批判することも多く起こると思いますが、これは避けられませんのでご了承下さい。なお、記述にはできるだけ正確を期すつもりですが、誤認等がありましたら指摘していただくようお願い致します。その他の ご意見、ご質問等も <mail@pipeorgan.jp> 大林 あてお送りください。

(7/ 11) 東京芸術劇場 (管理運営は東京都が財団法人東京都歴史文化財団に委託) は このオルガンの「今後の維持管理のあり方について見直し、検討を行っていくこととなった。ついては、パイプオルガンを所有する他のホールの例を参考とすべく調査を行っている」 という。その一環として、オルガンを所持する他のホール(等?)(のいくつか?)へ 6月30日付で 調査票 ( 1, 2, 3, 4, 5 ) が送付されている。


● 東京芸術劇場 ガルニエ・オルガンの導入と運営における問題点を探る


【0.問題点を指摘する前に】
以下の解説は、芸劇ガルニエオルガンの全般的な評価ではなく、問題点のみに焦点を絞ってそれを指摘するものである。ガルニエが、オルガンの意匠デザインにおいて希有の才能を発揮してきたことは、彼の全作品を俯瞰しなくても明らかである。しかし、オルガン、特にコンサートのためのオルガンは楽器としての機能がまっとうであることが最重要な条件だ。加えて音色的にも優れていることが望ましい。しかし、音量はともかく音質の良し悪しは多分に主観的な判断なのだから、ある程度以上の水準に達していれば、それ以上のものを公共のオルガンに求める必要はないのではないか。


【1.コンセプト上の問題】
このオルガンの最大の特徴であるルネサンス/バロック/モダンという各様式に従って製作されたオルガンは、コンサートホールのオルガンとして必要な音響的条件を満たすのかどうか。またガルニエの設計は、コンサートオルガンとして重要な機能を持ち合わせているのかどうか。以上について、詳細に検討してみることにする。

(1a) ホールの音響に適合しない様式 --- ルネサンス、バロック、モダン という3つのオルガン様式を併せ持つというのがこのオルガンのセールスポイントである。しかし、定義の曖昧なモダンはともかく、ルネサンスやバロックの様式によるオルガンは、ヨーロッパの教会の音響に合わせて最適化されたものであり、2000席のコンサートホール(以下、大ホールと略す)に設置すべきものではないと言えるのである。
ルネサンス、バロック、モダンという様式を併せ持つオルガンという謳い文句は、一般的なオルガン演奏家から見てなかなかに魅力があるように思われるだろう。だからこそ、オルガン選定委員会はこの設計案を提出したガルニエを、当ホールのオルガンを製作すべきビルダーとして選出し、実際の製作を託したのだと考えられる。
しかし、ルネサンス0なりバロックのオルガンは、たとえ歴史的に見て最大級のものを作ったところで、大ホールでは音量が不足することが予想される。ましてや、26、37というストップ数では明らかに、この種の様式のオルガンが本来持つべき音色が発揮されるために必要な音量を得ることができない。もちろん、残響感をはじめこのホールが持つ音響では、この種の「古楽器」が音量的音色的に持つ魅力が十分に発揮されないことは、計画時において予見できることである。
ちなみに、作者ガルニエはルンサンス部分を「17世紀初頭・オランダ・ルネサンス」としているようだが、なぜこれが例えば、もっと特徴的で興味深い「16世紀中葉のオランダ・ブラバント地方(あるいはユトレヒト)」ではないのだろうか? このストップ仕様では「バロック」との間に有意義な区別が見られず、「ルネサンス」自身が なくもがな ではないのか?
バロック部も、このホールの大半の席では音量が不足しており、このため音色的にも物足りない。

つぎに、モダン部だが、この部分はロマン派から近代へ至るオルガン音楽のレパートリーを担当する、いわばコンサートオルガンとして最重要な役目を担っているはずだ。ところが、実際にはモダンのコンセプトは甚だ曖昧だ。だかたころ「モダン」と呼ばれているわけだろうが、一般的認識として、モダンというオルガン様式があるわけではない。モダンの実体は、フランスの古典的(17〜18世紀)オルガンをベースに、極めて僅かのロマン派的要素を加味したに過ぎない。第4、第5鍵盤は純粋に古典的な鍵盤だ。ルネサンス、バロック同様、フランスの古典オルガンも、もともと教会の音響を前提に発達した様式なのだから、ストップ数を多少増やしたところで、大ホールのオルガンとしてオーケストラと対等に協演できるような音響的特性を持つことはできないだろう。
このような悲劇的なボタンの掛け違いが起こった原因は、ガルニエ自身が19世紀以降のオルガンやオルガン音楽に対して関心を持っていないこと、また、オルガン選定委員の中に、コンサートオルガニストはもちろんのこと、コンサートの経験が豊かな演奏家が含まれていなかったことにあるだろう。ガルニエも選定委員も「コンサートオルガン」という概念をしっかり把握していなかったことが致命的であった。

(1b) コンサートオルガンとして適合しない様式
--- 上記の指摘に加え、ヨーロッパの特定の地域・時代のキリスト教会内の文化遺産としての様式をもとにした(ヒントを得た?)設計が、東京都が所有する公共の大ホールに設置すべきオルガンとして、現実的であるかどうか、大いに問題だ。このことはまた、オルガンの設計製作が(それを行うビルダーの選定を含めて)、完成後のオルガンの運用と有機的に連携していないという問題にも関わっている。

(1a) における指摘を総合して、やや厳しい見方をするならば、このオルガンはバロック(的)な3つの部分からなるとさえ言えよう。古典的なオルガンの枠内で音量を増加しようとすると、風量や風圧のために鍵盤タッチが重くなり、演奏に支障を来すようになる、実際に、「モダン」部の鍵盤のタッチはもはや「モダン」な演奏を不可能とする程にまで重く、不快になっているようだ。「ルネサンス」と「バロック」とは、たとえそれが最善の形で完成したとしても、人口1000万を超えるメトロポリスの大音楽ホールに必要であるという根拠が、甚だ薄弱である。「バロック」はともかく、「ルネサンス」のオルガンの面白さ... それは、ロマネスクやゴシックの聖堂とその音響があってのものだが、それなしに、2000人の東京都民にアピールことがあるのだろうか?
芸術劇場のオルガンとして最も重要な条件は、2000人の聴衆をも魅了するオルガンの独奏を行ったり、必要なときにはいつでもフルスケールのモダン・オーケストラと協演したり、時にはオーケストラ全体を音のピラミッドの最底辺として支えることのできる機能を併せ持つことである。 そのためには、十分に広いデュナーミクを持つことが必要であることは言を待たない。しかし、最弱音を得るためにコンサートオルガンとして最も重要と言えるスウェル機能が、このオルガンでは十分に機能していない。これらの機能は「モダン」が担うべきはずだが、対応の仕方は甚だ不十分である。もちろん、ロマン派以降のオルガン音楽のレパートリーを演奏する際に望まれるようなストップ、音色の多くは、このオルガンには欠けている。

(1c) 実用性に乏しい演奏台諸機能 (ロマン派および主要近代作品の演奏を拒否する「モダン」部演奏台)

(1b) で指摘した不備に加え、「モダン」部の演奏台は、楽器と演奏家としてのインタフェイスとして大きな問題を抱えている。つまり、19世紀後半から20前半にかけて営々として積み上げられてきた、コンサートオルガンとしての標準的な演奏補助装置を備えていないばかりか、ストップノブの配置をはじめとする設計は、ロマン派〜近代の作品演奏を完全に無視したものである。(アシスタントなしで演奏できないようなオルガンはコンサートオルガンとは言えないであろう。)

以上 (1a) 〜 (1c) で説明した内容は、残念ながら今日のオルガニストはもとより、殆どのオルガン製作者やオルガンコンサルタント・鑑定家の間でも周知していない。東京都がこれまでに調査を依頼してきた鑑定家がコンサートホールのオルガンに関してある程度の経験を持たない限り、これらの問題点未だに指摘されていない可能性が大きい。しかし、(1a)、(1b)、(1c) のいずれか1つに該当しているだけでも大ホールのコンサートオルガンとして、コンサートオルガニストがリサイタルで使ったり、オーケストラとの協演をはじめ一般に想定される用途には不適当である。(1a) は回避できたとしても、(1b) と (1c) は重大な問題である。これらの理由から、すでに鑑定家がおそらく指摘している欠陥や不具合を是正したところで、このオルガンが芸術劇場の「大ホールのオルガン」として必要十分な機能を発揮する見込みは全くない。従って東京都は、このオルガンの「改善」にこれ以上、公金を費やすべきではない。

(1d) オルガンが回転してはいけない理由

オルガンを回転させるという仕掛けは、たんにメカニズムとして複雑な楽器になることが好ましくないという理由にだけでなく、楽器として(あるいは音源として、音響トランスデューサーとして)のオルガンの基本的な機能にとって有利なものではない。もちろん、大きな地震の可能性などを考えれば、ますます不利な条件である。


【2.実施設計上の問題】
(2a) 音響的には決定的に悪影響を与えた、デザイン優先の姿勢

(2b) キーアクションの構造的欠陥 -- 特に「モダン部」ではキーのタッチがかなり重いことに加え、ローラーボードその他アクション各部分の剛性が著しく不足しているため、トラッカー(メカニカル)方式のメリットが殆ど感じられないようなアクションになっている。

(2c) ストップアクションの構造的欠陥


【3.ストップ仕様・トーナルコンセプト・整音はじめ製作上の問題】
ガルニエおよび選定委員の研究不足(あるいは重大な過失?)により見逃された仕様上の欠陥と、尻拭いをさせられた東京都民....
(3a) 当初の仕様で、「モダン」部の III-II (Recit-Positif)カプラーが欠けていた問題
(3b) ずさんな整音



【4.メンテナンス上の問題】
(4a) 異常な支出 (弾き込みというまやかし? 日本の常識は世界の非常識)
(4b) 適正な維持費(メンテナンス費用)の算出例


● オルガン選定委員「選定」の問題

(1) 選定委員会は有用か? 選定委員会は誰のためにあるのか?
(2) 選定委員に要求される能力と経験



(執筆・文責: オルガン設計建造家 大林徳吾郎)

 筆者(大林徳吾郎)が 設計製作した 白石市のコンサートオルガン と
 
筆者が企画プロデュースしている オルガンコンサート
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