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図書館 Book Review洋書

新刊書を中心に、オルガン製作や音楽に関する注目すべき洋書を紹介します。
和書は、こちら


"The IAO Millennium Book"
   -- Thirteen Essays About the Organ edited by Paul Hale

    The Incorporated Association of Organists, July 2000
    vi + 183pp; ISBN 0 9538711 0 X


    この本を編集出版したIAO(Incorporated Association of Organists)は、1916年頃に設立 された団体。連合王国(英国)および世界中に、89のオルガニスト団体を傘下に持つとともに、個人会員も擁する。約6000名の会員の多くはオルガニストまたは合唱指揮者で、目的の一つは (オルガニストあるいは合唱指揮者としての) 水準の向上に寄与することとされている。本書は西暦2000年のミレニアムに因み、これら教会オルガニストを念頭に置いて纏められたものだろう。
    先に(下記参照)紹介した "Cambridge Companion" が、教育目的のアカデミックな内容であるのに対し こちらは、もっと広がりのある視点から纏められている。肩の凝らない内容の文章もあるが、それとてアカデミックと言うよりは啓蒙的だ。
    13のエッセイは殆ど20世紀を振り返って書かれたものだが、オルガン(製作)、音楽(作品)、演奏、そしてオルガン録音の 歴史など、オルガン文化のあらゆる分野にわたっている。教会の オルガンや音楽に留まるものではなく、シアターオルガンの演奏に 関する一編もあり、英国でもこの分野が盛んであることが窺える。
    巻頭にはピーター・ウィリアムズの「我々はオルガニスト・ オルガン作曲家 J・S・バッハをどれ程まで理解できるようになったか」という (相変わらず難解で衒学的な?) 寄稿がある一方で、特に注目したいのは、(それとは多分に対照的な)トーマス・マレイの「ネオ・オーケストラリストの異端的思想」という一文だろう。オルガン界に遍在するアカデミズムの不条理を鋭く突いた、告発の書だ。
    ケヴィン・バウヤーの「20世紀のヨーロッパ・オルガン音楽」は コッツウォルドのパブで 4人のオルガニスト?が雑談風に、20世紀オルガン作品に関して意見を交換する様子を描いた戯曲の体裁を採っている。十分に理解するには、オルガン音楽全般に関する 広範囲な知識と、イギリス口語英語の知識を要求されるが、なかなか面白い。
    ある程度オルガンに通じていて 英語が理解できれば、たいへん読み応えがある文章が多い。 推薦。
    → この本を購入


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"ECHO: European Cities of Historical Organs"

    ECHO: European Cities of Historical Organs
    ECHO (European Cities of Historical Organs), 2002
    www.echo-organs.org
    160pp with 70 full coloured photographs (paperback)


    6年前に調印された"ECHO" 議定書は: "The organ : a musical instrument that reflects Europe's cultural diversity" 『ヨーロッパ文化の多様性を反映する楽器、それこそがオルガン』 という言葉で始まっている。歴史的オルガンを擁するヨーロッパの9都市、アルクマール、フライベルク、イェテボリ、インスブルック、リスボン、ロスキレ、トゥルーズ、トレヴィソ、サラゴサ、が 「歴史的オルガンを擁するヨーロッパ都市」 という名の下に結集したのだ。
    オルガンを通して文化とは何かを示そうという、画期的な出来事だった。かつては戦争を繰り返してきたヨーロッパの人たちが、グローバリズムに対抗する知恵として選んだのがオルガンという楽器だった。
    見応えのある写真やストップ仕様を交え、9都市・44のオルガンの歴史が解説されているが、英語、およびそれぞれの都市の言語と、2カ国語で記されている。写真を見ているだけでも楽しい本だが、解説を読めば「オルガンとは何か」という疑問について、一つの大きな回答を得ることができるだろう。 推薦。
    → (入手先) OHS カタログサイト

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"Cambridge Companion to the Organ"

    Cambridge Universiry Press, 1998 (reprinted 2000)
    xiv + 340pp; ISBN 0 521 57584 2 (paperback) $26


    Cambridge Companion to the Organ
    ケンブリッジ大学出版局から出ている音楽ハンドブックシリーズ(Cambridge Companions to Music)には、楽器シリーズと作曲家シリーズとがあり、これは 前者の中の一冊。ケンブリッジ大のシスルウェイトとジョフリー・ ウェッバーが執筆者の人選と編集を担当し、全20章のエッセイが、 【1】 オルガンという楽器 1) 歴史; 2) 構造; 3) 音響原理; 4) 調律法とピッチ; 5) 各時代・地域のオルガンケース; 6) 現代のオルガン製作; 【2】 オルガン演奏 7) オルガン演奏の基礎; 8) 歴史的奏法; 9) オルガン音楽と典礼; 【3】 オルガン音楽のレパートリー 10) イタリア(〜フレスコバルディ迄); 11) イベリア(〜1700); 12) フランス古典; 13) 英国(〜c1700); 14) 南ドイツ(=Catholic Germany)とオーストリア(1648〜c1800); 15) 北ドイツオルガン学派; 16) バッハのオルガン音楽; 17) 1800年以後のドイツ; 18) 1800年以後のフランスとベルギー; 19) 1800年以後の英国; 20) 1800年以後の北アメリカ. ... という3つのセクションに収められている。
    それぞれの章の内容的充実度は執筆者によってかなりバラツキがある。第3章「オルガンの物理学(音響原理)」は相変わらず理論的すぎて、この種の書物に含めるには異質の感は否めない。それよりも、各国各地域のオルガン様式が、建築音響といかに関わっているか、といったことを代わりに説いてほしかった。
    評者が読んで面白かったのは、オックスフォード大学ニュー・カレッジ聖歌隊を率いて来日したこともある、ヒギンボトムによる第9章「オルガン音楽と典礼」で、オルガンをアルテルナティムに演奏する習慣の歴史的な解説である。ここで著者は、近年しばしば行われるように、バッハのクラヴィア練習曲第3部にまでアルテルナティムを適用するのは行き過ぎだと指摘する。
    いろいろ問題や不備のある記述を含むものの、類書が少なく比較的安価な書物なので、1冊持っていて損はないだろう。巻末の参考文献リストに10頁も費やしている。
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Frank-Harald Gress : "Die Orgeln Gottfried Silbermanns"

    Fotografiert von Michael Lange. Mit einem einleitenden Essay von Joachim Menzhausen.
    (2001.ISBN 3 930382 50 4 EUR 30.58 +
    送料) 31.5 x 24.5cm, 181pp.
    Michael Sandstein Verlag, Dresden. 2001


    バロック後期のドイツの優れたオルガン製作者、 ゴットフリート・ジルベルマンの作品を紹介する書物が出版された。 現存する大部分の楽器のストップ仕様、写真はもとより、戦争で消失したものに関してもできるだけ資料を 揃え、彼のほぼ全作品が概観できるように配慮された、モノグラフ。
    圧巻は写真。大判の書物であることが最大限に生かされ、鮮鋭であることは もちろんだが、発色の良さに驚かされる。撮影に際しては人工光が 使われているが全く不自然なところはなく、まさにプロの写真家の仕事と 言える。ほぼ隔頁ごとに大判の写真が掲載されている。オルガンの本で 質量共にこれを上回る写真を掲載したものは、今まで見たことがない。
    この本が出版されたドレスデンは、もともと音楽に加えカメラなど光学器械で 有名な土地であった。東独時代には、オルガン(の本)はその恩恵を受けることが 殆どなかったわけだが、今になってまさに伝統の実力を見せつけられる思いがする。 中には、1890年に撮影された写真(もちろん白黒)も載っている。
    G・ジルベルマンのファサード(オルガン前面)のデザインが特に優れている わけではないが、写真そのものが素晴らしいので、結果として 非常に見応えがある本となっている。 オルガン以外の風景や建物の写真も綺麗。巻末には、G・ジルベルマンの 年代順作品リスト、家系図、年表、工場内でどの弟子(Z.Hildebrandt, etc.) が何時から何時まで働いていたかという年表、用語集、文献リスト、などが 載っている。グラフィカルデザイン、装丁、いずれも一級の仕上がりを見せる書物である。
    文章はドイツ語のみだが、それぞれのオルガンの写真と仕様を見るだけでも十分おもしろい。 ページ数は特に多いとは言えないが、銀行がスポンサーになって出版されたので、これだけの本がわずか 60マルク ... 日本のCD 1枚と殆ど同じ値段 ... なので、推薦しないわけにはいかない。

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    オルガン音楽に興味を持つようになると、自分のお気に入りの作曲家ができて、その作曲家が 他にどのような曲を書いているのか知りたいと思うことがあります。 あるいはまた、自分の好きな作曲家がオルガン作品を書いているかどうか知りたいこともあるでしょう。 オルガン音楽は独立した分野なので、一般の音楽事典や作曲家辞典では詳しいことを知ることは困難です。 そのような時に役立つ書物を2点ご紹介します(いすれもイギリスで最近出版されたもの)。 オルガン音楽作品(作曲)を集めた辞典は今日までいくつか出版されていますが、 これらはいずれも非常に包括的なものです。しかし、この二つの意図・用途は大きく異なります。

John Henderson : "A Dictionary of Composers for Organ"

    編者(英国 The Royal School of Church Music の司書)は特に 1850-1930 のイギリスの作曲に重点を置いたと言っているが、邦人を含む 現代の作品まで、5000を超える作曲家を収録(1996年の初版)。 その作曲家についての解説、主要作品、出版社、演奏の難易度などが簡潔に記されている。 オルガン音楽に関心のある者にとっては必携の書。 なお、編者のホームページ上で、この書物の訂正や補遺等のアップデート情報が入手できる。 現在(2002年1月)準備中の第3版では 12500名近くの作曲家が収録されるという。
    詳細は A Directory of Composers for Organ を参照のこと。
    (2nd edition. ISBN 0 9528050 1 4 £32+送料)
W. B. Henshaw : "A Bibliography of Organ Music"
    こちらは、楽譜(現代譜)として出版されたオルガン作品(一部に手稿譜を含む)を作品(場合によっては 楽章)単位で羅列したもの。 作曲者数 5700、作品数 53000 を収録、1136頁の大部だが、曲のタイトル、出版年、出版社名 以外にはほとんど情報はない。 しかもタイトルは楽譜に印刷された表記のみで、英語の通称名があるような場合でもそれは示されていない。 巻末に、50以上のオルガン作品のある作曲家の一覧、また、 国別の(出版された)オルガン音楽の作曲者、作品 等の統計がある。 それによると、ドイツが 作曲家数 849、作品数 13117 で一位、以下、 イギリス(803/6809)、アメリカ(646/6571)、フランス(306/4528)、続いてオランダまたはイタリア ということになっている(移住した作曲家は別途計算)。 因みに、邦人の作曲家・作品は一点も含まれていない。 1作品につき1つの出版社名しか記されていない(編者が最初に入手した版ということである)。 従って本書の用途はかなり限定されるだろう。
    詳細は著者(Bardon Enterprises)のホームページを参照のこと。
    (1996. ISBN: 0-9528184-0-X £48.95+送料)
    上記2点とも注文は、著者から直接、あるいはクレジトカードを使用して amazon.co.uk からオンラインで可能。
    なお、18世紀以前の作品については Henshawの書の方がより包括的であるように見受けられるが、例えば Biezen が が編集した van Noordt の Tabulatuurboeck van Psalmen en Fantasyen (1659) の現代譜 (Vereniging voor Nederlandse Muziekgeschiedenis より出版) はいずれにも記述されていない。 一方、American Institute of Musicology が出版した Corpus of Early Keyboard Music のシリーズについては、 もっぱら Henderson の方で扱われているようだ(例えば、Delphin Strunck)。 いずれにせよ両書とも初版を見る限り、古典派あるいはバロック以前のオルガン作品を詳しく調べるためには十分とは言えない。
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